--- Key word集 ---

読影勉強会

ACCESS Today2 Yesterday0 Total2324

Key word集 : ここでは勉強会で取り上げた疾患に付随する医学用語の解説を簡単に行っていきます。

胸部疾患1

・シルエットサイン silhouette sign
水濃度と水濃度の陰影が相接して存在すると、その境界のコントラストが失われて、不鮮明になることをいう。すなわち、心臓、大血管、横隔膜、肺血管と水濃度を示す疾患(例えば肺炎、無気肺など)と相接すると、接した部分の境界、辺縁が不鮮明となる。

・エア・ブロンコグラム air bronchogram
通常、気管支内のガスと肺内のガスの区別はつかない。しかし、気管支周囲の肺胞内のガスが水濃度の物質と置換され、なおかつ気管支が侵されていなければ気管支内のガスは円柱状、もしくはY字状のガス像が融合像(コンソリデーション)の中に描出された状態をいう。

・肺実質
呼吸細気管支から肺胞まででガス交換の場となる。 つまり「空洞で何もない空間」のことを指す。

・肺間質
肺胞上皮細胞基底膜と毛細血管内皮細胞基底膜で囲まれた領域。
肺間質細胞として線維芽細胞、平滑筋細胞など
細胞外基質として膠原線維、弾性線維、基底膜など

胸部疾患2

胸水 hydrothorax

?漏出性胸水
肺内の正常な圧力に障害が起こることにより引き起こされる。漏出性胸水の原因の中で最も多いものはうっ血性心不全である。
「ポンプ機能低下」→「拡張末期圧上昇」→「血液停滞、静脈圧上昇」→「血漿成分の血管外漏出」→「胸水、浮腫の発生」

?滲出性胸水
肺疾患の結果として現れる。滲出性胸水の原因疾患としては、がん、結核、薬の反応、肺の感染症、アスベスト肺、サルコイドーシスなどが挙げられる。

・コンソリデーション consolidation
含気腔が液体や組織で置換された状態で肺胞性陰影を示す。
細葉陰影(細葉結節・5〜7mm)が時間の経過とともに滲出液がKohn孔等を介して隣接する肺胞腔へ広がり、小葉〜亜区域へと発達してゆく。

・無気肺 atelectasis
肺の含気量が減少したために肺が萎んだ状態。
? 閉塞性無気肺
気管支が閉塞したために末梢部分の含気量が減少した場合、その原因としては、炎症性疾患による分泌物の貯留、気管支内に突出した腫瘍、異物。なお、肺胞と肺胞の間には肺胞孔があるので、閉塞性無気肺を来たすためには、区域気管支よりも中枢に異常が生じなければならない。
? 圧迫性無気肺
胸水、気胸、肺癌、縦画腫瘍などの胸腔内の占拠性病変が、気管支を圧迫するとその末梢部分は無気肺となる。
? 粘着性無気肺
表面活性物質が不足すると、肺胞が膨らまなくなる。
? 瘢痕性無気肺
肺線維症などのように肺が固まった場合。

胸部疾患3

・肺動静脈婁 A-V fistula arterio-venous fistula
・Rendu-osler-weber病
遺伝性の血管壁形成異常をきたす疾患で,血管壁の筋組織や弾力線維の脆弱性のため,皮膚,粘膜(鼻,口腔,消化器,泌尿生殖器)および内臓(主に肺,肝,脾,網膜,脳,脊髄)に分布する毛細血管より大動静脈に至るさまざまなレベルの血管において形成異常が出現し,毛細血管拡張や動静脈瘻,動脈瘤を発症する。出血を繰り返すことから,遺伝性出血性末梢血管拡張症とも称せられる。

・日和見感染
普通の健康な人では感染症を起こさないような病原体(弱毒微生物・非病原微生物・平素無害菌などと呼ばれる)が原因で発症する感染症。
他の疾患にかかっているとき、臓器移植などで免疫抑制剤を使用しているとき、加齢などの要因によってヒトの免疫力が低下すると、普段であればその免疫力によって増殖が抑えられている、病原性の低い常在細菌が増殖し、その結果として病気を引き起こすことがある。すなわち、日和見感染は宿主と病原体の間で本来保たれていたバランスが、宿主側の抵抗力が低下することで発病するものである。

・肺アスペルギルス症
真菌に対するアレルギー反応によって発症し、原因として最も多いのはアスペルギルス‐フミガーツスである。この真菌を吸いこむと感作され、アレルギー性喘息を起こす。このほか、ペニシリウム、カンジダ、カーブラリア、ヘルミントスポリウムなどの真菌も、同様の病気を起こし、気道や肺にもっと複雑なアレルギー反応が起こる場合もある。
 この病気は細菌、ウイルス、大部分の真菌が起こす典型的な肺炎とは異なり、実際に真菌が肺に侵入したり組織を直接破壊することはない。真菌は気道内に喘息性粘液のかたまりを形成し、肺に周期的なアレルギー性の炎症を起こす。肺胞の大部分は好酸球で充満します。粘液を産生する細胞数が増加することもある。病気が進行すると、炎症によって主な気道が不可逆的に広がってしまうことがあり、これを気管支拡張症(気管支拡張症を参照)といい、最終的に肺は瘢痕化を起こす。

胸部疾患4

・間質性肺炎
肺胞隔壁を病変の主座とする炎症性疾患で、その疾患スペクトラムは広く、数日で呼吸困難が進行し死亡する急性の経過をたどるものから、10年以上の経過で進行する慢性のものまで幅広い病態が含まれる。

・スリガラス状陰影

・突発性間質性肺炎慢性型 UIP:usual interstitial pneumonia
慢性に経過する間質性肺炎の病理像とされており、徐々に進行する繊維化により肺構造の著しい改築が進行する。

・突発性間質性肺炎急性型 AIP:acute interstitial pneumonia

・DIP

胸部疾患5

・肺門影
肺門とは縦隔から肺動脈、気管支が肺へ出るところであり、肺門影は主に、肺門から肺に出たところの肺動脈とその分枝、および上肺静脈の陰影をいう。右肺動脈は右上葉気管支の下方を下行するが、左肺動脈は左主気管支を乗り越えて下行するため、左右の肺動静脈上縁の高さを比較すると、正常で左が右よりも1〜2cm高い。

・腕頭動脈の蛇行
腕頭動脈が蛇行すると縦隔胸膜を右方の肺野に押し出して、一見前上縦隔腫瘍のようにみえることがある。腕頭動脈は気管の前方に存在するので、その蛇行によって気管の偏位をきたさないのが特徴の一つで、さらに同時に胸部下行大動脈が蛇行して左肺に突出している所見が同時に存在しているのが特徴である。

・大動脈肺動脈窓 aortic-pulmonary window(A-P window)
大動脈弓の下縁と左肺動脈上縁との間は側面像からみると三日月様、正面からみると三角形の窓のようにみえる縦隔部分がある。この大動脈肺動脈窓の中には左反回神経、動脈管索、ボタローリンパ節、上行大動脈リンパ節などが脂肪に包まれて存在する。この部の左縁は正常で陥凹してやや透亮的であるが、ボタローリンパ節が腫大すると充実的になり、肺野へ突出する。

・サルコイドーシス
75〜90%は肺門と縦隔リンパ節腫大をきたす。そのリンパ節腫大の好発部位は両側肺門と右気管傍部であるが(one-two-three sign)、同時に大動脈周囲、気管分岐部、およびボタローリンパ節腫大を伴う。しかし、片側肺門リンパ節腫大(1〜3%)、前縦隔の血管前リンパ節腫大(10%)、後縦隔リンパ節腫大は稀である。

・蝶形陰影 butterfly shadow
蝶形陰影は両側対称性の肺門周囲のair bronchogramを伴う肺胞性陰影で、肺の外套部は侵されないで、取り残されている。この陰影を呈する疾患は多くない。最も頻度が多いのはうっ血肺水腫で、通常心拡大、両側胸水を伴っている。臨床的に肺炎症状があり、X線写真で蝶形陰影が認められた時には日和見感染によるカリニ肺炎とサイトメガロウイルス肺炎のことが多く、細菌性ではないことが多い。

胸部疾患6

○気胸
胸膜腔内に空気が貯留した状態
自然気胸 :?特発性気胸:気腫性嚢胞(ブレブ、ブラ)の破裂によるとされている ?続発性気胸:他の肺疾患に続発する。
外傷性気胸:?開放性気胸 a.外開放性気胸:外界と交通した侵入路を通じて空気が直接胸腔内にはいるもの。 b.内開放性気胸:胸膜腔と気管支または食道との間にできた内瘻を通じて空気が胸膜腔内にはいるもの。?医原性気胸:IVH挿入など医療行為により発生したもの。?閉鎖性気胸:外界との通路がなんらかの機転で閉塞した場合。人工気胸:かつて結核の治療として行われていた。肺を虚脱するために胸腔に空気・窒素のような吸収性の遅いガスを注入して作った気胸。

*緊張性気胸:気胸を起こした部位が一方通行の弁を作ったとき、空気が吸気時に胸膜腔内に侵入するが呼気時逸脱できない、check valve 機序が生じたとき緊張性気胸という

撮影・読影のポイント
?皮膚のしわ、肋骨、鎖骨、包帯、ベットのシーツ、チューブなどは、気胸の陰影と紛らわしいことがある。
?呼気で撮影することで、胸膜腔内の空気量は変わらないものの肺の容積が減少し、気胸部分が強調されてよく見える。
?患側を上にした側臥位で撮影すると、側腹壁直下に空気が移動し、診断が容易となることがある。

○縦隔気腫
縦隔内に空気が貯留した状態
  
○肺門重畳徴候:hilum overlay sign
肺門影に重なって大きな縦隔腫瘤が見られた場合、縦隔腫瘤影内に肺門の血管影が認められた場合は、肺門より前方にある前縦隔腫瘍か後縦隔腫瘍あるいは下行大動脈瘤や下行大動脈蛇行の可能性が高い。これをhilum overlay sign というが、シルエットサインの応用である。 心臓全体が拡大すると、肺血管影も同時に外方へ押し出されて見える。

○縦隔腫瘤
・無症状のことが多い
・胸膜に被われているため、表面平滑な腫瘤で(胸膜に浸潤がある場合、平滑でないこともある)、腫瘤と縦隔とは、鈍角で腫瘤の両端は縦隔に対して裾野状に移行する(肺内腫瘍は腫瘤との境界部は通常鋭角となる
・内部の性状を調べるために超音波やCT、MRIなどの検査が必要となる
・日本の統計では、胸腺腫瘍、奇形腫、神経原性腫瘍の頻度が高い
*脂肪を含む縦隔病変 胸腺脂肪腫、脂肪腫、脂肪肉腫、成熟型奇形腫 など
*石灰化を含む縦隔病変 胸腺腫、胸腺癌、奇形腫、悪性胚細胞性腫瘍、縦隔内甲状腺腫、血管腫、Castlemanリンパ腫、神経原性腫瘍 など
*強く造影される病変 Castlemanリンパ腫、血管原性腫瘍、縦隔内甲状腺腫、神経原性腫瘍、副甲状腺腺腫、腎癌や肝癌のリンパ節転移、血管病変、縦隔膿瘍の辺縁 など

○レックリングハウゼン病(von Recklinghausen’s disease)
皮膚や神経を中心に人体の多くの器官に神経線維腫をはじめとするさまざまな異常を生じる遺伝性の病気。主な症状に、皮膚にできる色素斑、皮膚の神経線維腫、目や骨の異常などがある。神経線維腫は、皮膚や皮膚より下の組織にできる良性腫瘍で、神経性の細胞や線維性の組織、非常に細い血管などからできている。色素斑は、生まれたときからあるのが普通で、神経線維腫は、生まれたときになく、個人差があるものの思春期頃から少しずつできてくるのが普通。ごく稀に神経線維腫が悪性化した場合を除いて、レックリングハウゼン病で死亡することはない。

胸部疾患8
・高分化型腺癌(肺野型肺癌)
区域気管支よりも末梢に発生する癌で、初期には自覚症状、他覚所見ともに乏しい。
肺野型肺癌の大部分は腺癌で、小細胞癌は5%以下です。また、扁平上皮癌の20%が肺野型です。
腺癌でも高分化型の場合は陰影が淡く、輪郭も不明瞭、中分化型、低分化型になると陰影濃度が上昇し、輪郭も明瞭になります。
初期の高分化型腺癌では、CTでスリガラス状陰影(ground glass opacity:GGO)といわれる淡い陰影が見られます。

・転移性腫瘍
腫瘍細胞が肺に到達する機序により血行性、リンパ行性に大別されます。
血行性転移…腫瘍細胞が血液に乗って肺動脈の末梢に達し、そこで増殖するもの。
X線所見は、境界明瞭な類円形の結節状陰影として認められるのが典型的です。孤立性の場合、原発性肺癌と比べて辺縁が明瞭であること、癌放射のような不整像に乏しいこと、胸膜の引きつれ像、血管の収束像などの随伴所見に乏しいことなどが参考になります。
リンパ行性転移…胸壁、横隔膜、後腹膜などのリンパ系から、直接肺門部リンパ節に腫瘍細胞が到達すもので、肺門に達した腫瘍細胞は、さらに肺内リンパ系を介して逆行性に肺内進展していきます。
X線所見としては、肺門部から肺野末梢にかけて認められる索状・網状陰影、および肺門リンパ節腫大が主体です。肺野の索状陰影は、肺間質のリンパ管に充満した腫瘍細胞を反映した所見です。

胸部疾患9
・肺過誤腫
○過誤腫とは、一般的には腫瘍と奇形(形態発生異常)の中間的な性格の病変とされい
る。ただし、過誤腫と良性腫瘍、過形成との厳密な区別は曖昧である。
○特徴
肺過誤腫は偶然発見されることが多い。通常は単発性で4cm以下。正常組織(軟骨、
結合組織、脂肪、平滑筋、呼吸器系上皮)より構成されており、気管支周囲の間葉由来
の良性腫瘍性病変と考えられている。辺縁は平滑で円形であるが、一部の辺縁が分葉し
ていることもある。石灰化のパターンにはポップコーン型と点状びまん性とがある。50%
に脂肪成分を有する。

・小細胞癌
○小細胞肺癌は、肺癌全体の約15〜20%を占める腫瘍である。小細胞肺癌は他の
肺癌と比較して、腫瘍の増殖速度が速い反面、抗癌剤、放射線治療に対する感受性
が高く、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌などとは著しく異なる臨床上の特徴を有して
いる。
○小細胞癌は肺門部に好発するとされているが末梢肺野に発生することも稀ではない。
○原発巣が小さな時期よりリンパ節転移、腫脹が認められる。

中枢神経1

・脳出血 cerebral hemorrhege
脳内の血管が破綻して脳実質が圧迫、浸潤、破壊されることにより発症する。高血圧性脳出血の好発部位としてレンズ核(被殻)、視床、大脳皮質下部、小脳、橋。他に硬膜下、硬膜外出血、クモ膜下出血。

・脳梗塞 cerebral infarction
脳実質を栄養する血管が閉塞し、閉塞部より末梢部分が虚血〜壊死に陥ること。大別してアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞。

・脳浮腫 cerebral edema
脳組織の代謝障害により、脳細胞内外に異常に水分が貯留した状態。頭蓋内に発生する諸疾患はほとんどその原因となる。放置すれば「脳圧更新」→「脳ヘルニア」→「呼吸停止」に至る。

・視床 thalamus
灰白質で間脳の主要部をなす。嗅覚を除く全ての感覚路は大脳皮質に先立って視床を通り、ここにシナプスを作る。視床傷害はthalamic syndromeとして知られ、表情運動や知覚が障害されるほか、自発痛、痛覚過敏などが現れる。

・内包 internal capsule
レンズ核と視床核、尾状核に挟まれた白質部で視床とともに脳出血の好発部位である。CT上ひらがなの「く」の字状を呈し、その先端は内側に向かっている。この部分の傷害はその程度に応じて、反対側の顔面、舌、上下肢の片麻痺、半側知覚麻痺および半盲がおこる。

中枢神経2

・脳膿瘍 brain abscess
脳実質内に膿が限局性に貯留したもので、ブドウ球菌、レンサ球菌などの一般化膿菌によるものの他に、結核、梅毒、寄生虫などによる膿瘍も含まれる。

・聴神経鞘腫 acoustic neurinoma
頭蓋内神経鞘腫はほとんど聴神経におこり、まれに三叉神経にもおこる。内耳孔付近の神経鞘に発生し、初期には患側の難聴、耳鳴、めまいなどの前庭機能障害が現れるが、次第に小脳橋角部(c-p angle)に発育して三叉神経、顔面神経、小脳を侵すようになる。良性腫瘍で発育は緩慢だが、いずれは頭蓋内圧亢進症状を呈してくる。

・境界領域梗塞
中大脳動脈、前、後大脳動脈の灌流域の境界におこる脳梗塞。
内頚動脈閉塞ではウィリス動脈輪などの側副血行路の発達の程度に応じて、全く無症状のものから内頚動脈領域全域に及ぶ大梗塞までさまざまな病態を呈する。境界領域梗塞はその一型であり、灌流血流量の低下により動脈の支配領域から最も遠い部分から梗塞に陥るものをいう。

・クモ膜下出血 subaracnoid hemorrhege : SAH
脳動脈瘤の破裂、頭部外傷、腫瘍などによりクモ膜下腔へ出血を来たす病態。非外傷のものに関しては動脈瘤が大部分を占め、次いで高血圧性・動脈硬化性疾患、脳動静脈奇形である。多くは前駆症状がなく、突然に激しい後頭部痛、頚部硬直、嘔吐などの髄膜刺激症状。意識障害を来たす。以上の諸症状は比較的短時間に軽快するものが多いが、初回発作より2週で半数以上の再出血をきたし、その死亡率も高い。再出血を防ぐために脳動脈クリッピング術、コイルによる塞栓術が行われる。

中枢神経3

・脳動静脈奇形 intraclanial arteriovenous malformation : AVM
脳血管発生のある時期に毛細血管の形成を欠き、限局した部位の動脈と静脈とが直接吻合した奇形。動脈圧により静脈圧が異常に上昇し、静脈の拡張、蛇行をきたし、破裂するとクモ膜下出血、脳出血を起こす。
feeding artery→nidus→draining vein

・副甲状腺機能低下症 hypoparathyroidism ⇔副甲状腺機能亢進症
副甲状腺ホルモンの低下している状態である。血液生化学所見として低カルシウム血症、高リン血症を示し、尿中カルシウム、リンの排泄は著明に減少する。脳波の異常、脳圧亢進、脳内基底核の石灰化が見られることがある。この石灰化はCTによる観察が適しており、両側性に基底核の石灰化が認められるので診断は容易である。

・スタージ・ウェバー症候群 Sturge-weber syndrome
?三叉神経領域(顔面、頭部)の血管腫 ?先天性緑内障 ?片側性、または両側性の牛眼、多くは半盲 ?脳軟膜の血管腫性病変ならびにそれに隣接する脳実質における諸変化として、脳実質の石灰化、てんかん、錐体路系症状が見られる。
生来性素因によってまず総頚動脈流域の血管腫性病変が生じ、二次的に脳実質の病変を招来したものと考えられている。

・低酸素脳症 
なんらかの理由で心肺停止状態が長く続き、脳に不可逆的な損傷を受けた病状をいう。単純CT上脳皮質は白質より濃度が低下し、基底核のコントラスト低下を起こす。また脳の腫脹により脳溝、脳室は狭小化〜消失する。

頭頚部1

・副鼻腔炎
通常の上気道炎などによって、自然孔付近の粘膜の浮腫や炎症による腫脹が生じると、自然孔が閉鎖され、副鼻腔が孤立化して、真菌の混合感染によって急性副鼻腔炎が生じる。部位別では上顎洞に最も多い。自然孔の閉塞が原因となるものでは一側性のことが多く、両側が対称性に所見を呈している場合は、アレルギー性が多い。
慢性副鼻腔炎では、多くの場合複数の副鼻腔に炎症が存在する。局所的要因にはアデノイド、鼻中隔湾曲症や肥厚性鼻炎に感染が重なったもの、全身的要因にはアレルギー素因が挙げられる。炎症性ポリープや骨壁の肥厚・硬化像を認めることもある。

・急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎はさまざまな細菌(主にかぜなどの上気道ウイルス)によって引き起こされるもので、副鼻腔の開口部(自然孔)に閉塞が生じた後によく発症する。
閉塞を起こした副鼻腔で、内圧が低下すると痛みが生じ、分泌液がたまる。これは細菌の温床となり、細菌と戦うための白血球やさらに多くの分泌液がたまる。この流入によりさらに空洞内の圧力が上昇し痛みが増す。
アレルギーによる粘膜の腫れも、自然孔が閉塞する原因となる。また、鼻中隔湾曲症を持つ人では、さらに副鼻腔の閉塞を起こしやすくなる。
視覚の異常や、目の周囲の腫れはきわめて危険な状態で、数分から数時間以内に失明する恐れがある。

・慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎の症状が8〜12週間以上続く場合を慢性副鼻腔炎という。
原因は明らかではないが、ウイルスの感染、重度のアレルギー、環境汚染物質の影響などに引き続き起きる。遺伝的要因もある。
細菌や真菌による感染症にかかっている人では、炎症はかなりひどくなる。
ときに上の歯にできた膿瘍がその上の副鼻腔に広がり、上顎洞の慢性副鼻腔炎を引き起こすことがある。
症状は急性副鼻腔炎に比べかなり軽く、痛みもほとんど見られない。

・真菌性副鼻腔炎
自然界に通常見られるさまざまな真菌は健康な人の鼻や副鼻腔にも存在しているが、特定の状況下では、重度の炎症を引き起こす。
真菌球、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、侵襲的真菌性副鼻腔炎などがあげられる。
真菌球は特に病気のない人にも見られる真菌の異常増殖。副鼻腔の痛み、圧迫感、鼻詰まりなどの症状があり、手術で感染部分を切開し、菌体などの貯留物を取り除く必要がある。

・アレルギー性真菌性副鼻腔炎
アレルギー性真菌性副鼻腔炎は、真菌が原因で激しい鼻詰まりがおき、鼻や副鼻腔にポリープが形成される。
ポリープが自然孔をふさぐため、慢性的な炎症を起こす。
手術をし、薬剤での長期療養が必要。
しばしば再発する。

・侵襲性真菌性副鼻腔炎
化学療法やコントロール不良な糖尿病、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、エイズなどの病気によって、免疫機能が低下した人に起こりやすい、とても重い病気。
進行は早く、痛み、発熱、膿のような鼻汁などの症状。
感染が眼窩に広がると、眼球の突出や失明を引き起こす。

・真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎の原因は充分に解明されていないが、一般的には鼓膜の中と外の気圧の調節がうまく行かないことが成因と考えられている。
滲出性中耳炎を繰り返したり遷延した結果、陥凹して袋状になった鼓膜が鼓膜の中の壁とくっついたり奥深くの空洞へ入り込む。この袋の中に角化した鼓膜の上皮が重なって溜まっていく。そのカスはやがて炎症を引き起こし、鼓膜を傷害する。白血球などの炎症細胞の放出するいろいろな酵素などが鼓膜上皮を増殖させたり、周りの骨を破壊吸収する。こうして周りの骨屋組織を破壊しながら徐々に大きくなる。
耳小骨を破壊して聴力障害を起こしたり、三半規管を破壊してめまいを起こす。顔面神経を破壊すると、顔面神経麻痺をおこす。
脳の方向に進むと髄膜炎など重篤な合併症起こすこともある。
自覚症状は、第一に普通痛みを伴わない悪臭のある耳垂れ、次に難聴。顔面神経麻痺や強い頭痛、発熱などがでるまで放置してはならない。
悪臭のある耳垂れが出たら、専門医へ!

・聴神経鞘腫
脳にできる良性腫瘍の中では、髄膜腫、下垂体腺腫二対で、3番目に多い。(脳腫瘍全体の10%)女性に多い(男性の1.6倍)増殖速度は遅く、他臓器への転移もまれ。
神経鞘腫の70〜80%が聴神経由来。ついで三叉神経、顔面神経。
腫瘍が大きくなると、周りの脳組織、脳神経、脳血管を巻き込み、手術で完全に取り除くことは難しくなり、術後の放射線療法が行われることもある。
最近では、腫瘍が小さい場合には放射線療法が行われることもある。
腫瘍が発生した神経の機能低下によるもの。
聴神経鞘腫では聴力低下(語識別力の低下から始まるのが特徴)や耳鳴り。
腫瘍がある程度大きくなると、近くの神経を圧迫し機能障害を生じる。
さらに大きくなると、脳幹や小脳を圧迫するようになり、手足の運動失調や麻痺、さらに意識障害をおこし昏睡。髄液の流れが悪くなり、水頭症を起こすと頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状を起こし、生命を脅かすことも。

頭頚部2

甲状腺 Thyroid
・甲状腺は前頸部に蝶が羽を広げたような形で存在する血流に飛んだ内分泌臓器で、左右の側葉と狭部からなる。
・成人の正常甲状腺側葉の大きさは約4×2×1cmで、狭部は長さが約2cm、厚みが1〜3cm程度。
・甲状腺からはトリヨードサイロニン(T3)とサイロニン(T4)という甲状腺ホルモンが分泌されていて、脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により分泌量が調整されている。甲状腺ホルモンには、細胞の新陳代謝を促す作用がある。

腺腫(濾胞腺腫follicular adenoma)
・濾胞上皮から発生した良性の腫瘍で、組織学的には腫瘍辺縁に被膜をもち、周辺の甲状腺組織を隔絶し、圧排性増殖を示す。
・原則として単発で、形態は整で楕円形か卵形に近く、主に充実性で、嚢胞性の変化はあっても小さい。
・粗大あるいは線状の石灰化像を伴うことがある。
・20〜50歳の女性に多い。
・微小浸潤型の濾胞癌とは永久標本でなければ鑑別できないため、濾胞腺腫と濾胞癌を合わせて濾胞性病変ということがある。
・治療方針は、3cm以上のもの、機能性の腺腫には手術を行う。原則として片葉切除とする。

濾胞癌(follicular carcinoma)
・日本では甲状腺癌の5%以下を占める。ほとんどの場合、濾胞腺腫から生ずるといわれ、組織学的に被膜浸潤や脈管侵襲を認める。乳頭癌に比べ所属リンパ節転移が少ない反面、血管侵襲が多く、肺や骨への遠隔転移をきたしやすい。濾胞癌の60〜70%に腺腫様甲状腺腫が合併しているといわれる。濾胞癌は微小浸潤癌と広範浸潤型濾胞癌に分けられる。
・微小浸潤癌は肉眼的には良性結節と区別がつかず、組織学的検索で被膜浸潤が見つかり診断がつく。血行性転移が8〜10%にみられ、癌死率は3%である。治療は腫瘍を含む片葉切除を行う。
・広範浸潤型濾胞癌は、肉眼的に明瞭な浸潤像を示すもの、あるいは組織学的に浸潤が広範囲にみられるもので、血行性転移が50〜80%にみられ、癌死率は50%と高い。腫瘍が被膜を破って周りに増殖し、それがまたすぐ被膜で包まれ八頭状の形態を示すものや、被膜の厚いものは、血行性転移を起こす頻度が高い。

未分化癌(undifferentiated or anaplastic carcinoma)
・未分化癌は日本で甲状腺癌の2〜5%を占める。急速に週の単位で大きくなり、発熱などの激しい全身症状、呼吸困難や嚥下障害などの激しい局所症状、白血球増多、血沈亢進などを伴う。局所浸潤が激しく、必ずといっていいほど血行性転移を起こす。リンパ節転移も高率にみられる。平均生存は数ヶ月と予後は非常に悪い。
・多くは乳頭癌、一部濾胞癌から未分化転化する。先行病変を示唆する石灰化(58%)や壊死性の変化(78%)を認める。治療は化学療法、放射線治療、手術を組み合わせて行う。
・超音波検査では、通常大きな不整形の低エコー腫瘤として描出され、しばしば先行病変(多くは乳頭癌)を示唆する石灰化像を認める。内部に出血や壊死による嚢胞性変化を伴うことがある。
・CTやMRIは治療前後の効果判定や経過観察、遠隔転移の検索に役立つ。

頸部リンパ節
・リンパ系は結合組織内のリンパ嚢としてはじまり、これが統合して内皮細胞に覆われるリンパ管を形成する。輸入リンパ管は各リンパ節皮質の辺縁洞に注ぎ、さまざまな経路を介してリンパ節体部を通る、または辺縁洞より直接、リンパ門の輸出リンパ管より流出する。輸出リンパ管が合わさりリンパ幹を形成、最終的には内頸静脈と鎖骨下静脈で形成される静脈角により終末リンパ幹である胸管、鎖骨下リンパ管、右リンパ管を介して静脈大循環に合流する。頸部のリンパの一部は内頸静脈へ直接流入する。末梢においては輸出リンパ管と静脈系の間のリンパ静脈交通もみられる。
・人体では全身で約800個あるリンパ節のうち頸部にはそのうち約300個が存在する。
・頸部軟部組織とリンパが特異的に流入するリンパ節領域とが対応しており、ここからの輸入リンパ経路も解剖学的にほぼ一定している。

泌尿生殖器1

・腎細胞癌 renal cell carcinoma
近位尿細管上皮由来といわれ、腎皮質に発生する悪性腫瘍の90%を占める。50〜70歳に好発し、男女比2:1で男性に多い。古典的な3大兆候としては血尿、腎部疼痛、腹部腫瘤が知られているが、全て認めることはまれである。腎癌取り扱い規約では6型に分類され、遠隔転移は肺、肝、副腎、対側腎、脳の順に多い。

・腎血管筋脂肪腫 angiomyolipoma:AML
平滑筋、血管、脂肪成分よりなる過誤腫で、その構成成分の割合は腫瘍によって異なる。超音波検査では脂肪成分が多いため著明な高エコーを呈し、低エコーの腎癌との鑑別は比較的容易であるが、高エコーを呈する小腎癌との鑑別が必要である。腫瘍内に脂肪を認められれば診断がつくが、脂肪成分の少ないAMLの場合は鑑別が困難である。

・腎嚢胞 renal cyst
腎の嚢胞性病変は多種多様であり、臨床的に有用な分類をすることは難しい。一般的に尿細管の閉塞が原因と考えられており単純性腎嚢胞の壁は立方、あるいは扁平上皮により覆われており1〜2mmの厚さである。周囲人実質とは明瞭に境界され、嚢胞の内容は尿ではなく漿液性である。

・傍腎盂嚢胞 parapelvic cyst
傍腎盂嚢胞は腎門部に存在する嚢胞であり、腎盂から分離せずに存在しリンパ原性と考えられている。傍腎嚢胞(paranephric syst)は傍腎偽嚢胞やurinomaと呼ばれ、腎周囲に尿が漏出し、嚢胞状になったものである。

泌尿生殖器2

・子宮筋腫 
・子宮頸癌
・子宮体癌

腹部疾患1

・十二指腸乳頭
・ERCP
・PD
・術後膿瘍

腹部疾患2

・target sign
造影CTで腸管壁をtangentに見ると、造影効果の高い内層(粘膜層)、低い中間層(粘膜下層と筋層)、高い外層(漿膜下層)の3層構造を呈する。炎症性疾患や虚血性疾患などによる腸管の浮腫による肥厚では、この3層構造が保たれたまま壁肥厚が起り特に中間層が厚くなる。このため、同心円状に見えること多い。

・string of beads sign
腹部単純立位写真において認められる所見で、液体形成を伴った腸管内ガス像が念珠状に配列していることをいう。これは機械的イレウスを示唆する所見である。

・closed loop
盲腸・S状結腸軸捻転、外ヘルニア(閉鎖孔・鼠径・大腿ヘルニア)嵌頓、内ヘルニア(腸間膜裂孔ヘルニア・傍十二指腸ヘルニア)嵌頓、結節形成や索状物によって腸管が絞扼される場合には二ヶ所以上で狭窄閉塞してclosed loopを形成する。ヘルニア門、索状物、捻転部、結節部などで、灌流する血管が絞扼されるためclosed loopは壊死に陥りやすい。

・double target sign
肝膿瘍は造影早期でリング状濃染をしめす周りに、肝実質の浮腫性変化を
反映する低濃度域が描出されることがあり、Double Target Signと呼ばれ、膿瘍に特徴的な所見。

・膵管乳頭腫瘍
膵嚢胞性腫瘤の中でも粘液産生腫瘍は大きく二つに分類され、膵管内乳頭腫瘍(intraductal papillary mucinous tumor:IPMT)は粘液産生能を有し乳頭状増殖を特徴とする上皮より構成される膵管腫瘍。粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic tumor:MCT)は粘液産生能を有する上皮より構成される嚢胞性腫瘍で卵巣様間質が存在するものと定義され、上皮の異型度によって、いずれも腺腫、境界病変、癌に分類される。
IPMTは高齢男性(60〜70歳)の膵頭部に好発する。基本的に主膵管あるいは大型分枝に病変の主座を置く病変であり、主膵管型と分枝型に分類される。病理学的には病変が両方に及ぶ混合型も少なくない。多量な粘液のため膵管は嚢胞状を呈し、拡張が分枝に及ぶと多房性を示す。分枝型の病変が多発することも稀ではない。分枝型のIPMTはほとんどの場合、主膵管と交通を有する。病理組織学的にはadenoma-carcinoma sequenceを呈する発育速度の遅い腫瘍とされ、分枝型の病変では経過観察が可能な場合もある。
MCTは圧倒的に女性(40〜50歳)に多く、男性例は例外的で、膵体尾部を好発部位とする基本的に単発性の嚢胞性腫瘍である。肉眼的特徴は厚い線維性の皮膜に覆われた表面平滑な球形の腫瘍であり、単房性あるいは大型の嚢胞が多房性に集簇し、内部には粘稠液や壊死物質を有し、皮膜や隔壁には石灰化を高頻度に伴う。病変内の嚢胞間には交通はなく、病変と膵管系との交通頻度は少ない。MCTは良悪性にかかわらずmalignant potentialを有する腫瘍と考えられており、腫瘍の完全切除が原則である。


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-04-13 (月) 15:52:05 (3393d)